NOBUKO/吉岡孝次
I
切り抜けられるかNOBUKOさん
結論の下った炭鉱の島から
あなたは僕の行方を指し示さなければならないのです
II
21の夏
生まれたばかりのNOBUKOさん
雲が多い、ねずみ色の空が水平線まではみ出していた
猫が多い、木造住宅はどれも二階建てでひしゃげていた
海の色がよく見える岬の墓場が
十字架を父としてあなたを渡してくれました
僕と同い年の赤ん坊
抱きとめたのは僕なのに
見つめているのはNOBUKOさん
自分のことにばかりかかずらっている僕に
磯辺の小さな生き物をぬるぬると飲み込ませ
あのとき僕は受精したのかもしれません
島の頂上には展望台があって
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