羽音の思惑(かべのなかから)/ホロウ・シカエルボク
殺菌されているような灼熱の中
塞がれてはいないが、とうに朽ちて
忘れられた路の、ひび割れた路面に
おれが求めるうたはいつだって落ちている
摩耗したスニーカーの靴底で、?き集めながら歩いてゆく
忘れられたのは、意味を失くしたから
雑草と落葉と、小石と、苔に塗り潰されて
枯れた川のようにうねりながら
いつかは自分だけのものだった到達点をまだ目指している
迷い込んだ風だけが、すべてを知っている通り
放置された自動車、元の色も判らないほどに錆びて
もう回らないハンドルは、痴呆者の目つきのようだ
草むらで弛んでいた馬鹿でかい飛蝗が、俺の歩みに驚いて跳ぶ
夏に跳ぶ虫の羽音は、みん
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