骨折/もっぷ
 
独身最後の八月のその終わりに
痛みに耐えかねてわたしは
あなたの部屋の
あなたの冷蔵庫を開ける未明

みつけられずに
カニカマを消極的に選んだ
食べ終えて そして胃薬とバファリンとを
未だ遠いままの味の水で胃に落とし



――先週の日曜日に転んで
先週の水曜日に整形外科に行って
肋骨三本の骨折を知り
治るまでには一か月と知り

今夜はちいさなおむすびを握って
夜勤のあなたに手渡して見送る
いつしか今後の生活時間に思い巡らし乍ら
そのまま眠っていたらしい――



患部をしめつけていたサポーターを緩めて 微かな
深呼吸 あなたの独身部屋/その片隅で


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