しずく ふるえ/木立 悟
 





夜は窓を踏み
窓は夜に座す
がたがたと
風のふりをする亡者


記憶は波の上に居る
はばたきとくちづけをまちがえる
羽のような蜘蛛の巣があり
風を抄い 揺れつづけている


海は接し 灯りは離れる
街の音より大きな潮音
ずっと応えの無い人を
応えの無いまま抱き寄せる


小さな音が集まり
夜を作る
かがやきのない白い陽
月を呑んでは吐く楽器


どこまでも自身であろうとするものとして
雨は土と水に問いつづける
かかとをそろえ 腕をひろげ
羽と涙を歌いだす


遠回りの地に生まれたものは
空を視るまばたきが多くなる
たどり着きたいところへたどり着こうと
服に積もる暗がりを握りしめる


夜は何も顧みない
自身の眷属でさえ
真昼の影に置き去りにし
はばたきを浴びることに忙しい


手の上の芽に傅くもの
金魚鉢の吹雪を見つめては
ひとつをひとつから放つことなく
降りつづく夜を聴きつづけている

















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