【批評ギルド】原口昇平「とりあう手」について/田代深子
 
向/思考せよ。絶望だと? 甘ったれるな。物語の地平の向こうにある〈他〉を指向するとき、われわれの語る言葉は無惨なものだ。とりとめなく、なんども前言撤回し、謝罪し、言い訳し、結末など思いも及ばず七転八倒する。矛盾だらけで一貫性も統一感もあったものではない。そして徹底的に〈他〉なるものたちに打ちのめされ続ける。…そこにあるのは切望のはずなのだが。

 さあ。
 「とりあう手」は、かなしく美しい物語を語る者の詩である。こぼれおちた、傷ついた者をひろいあげ物語る者がいて、彼自身もまた傷つきこぼれ絶望しており、かなしく美しい物語を求めずにはおれない。そして彼もさらなる入れ籠の、かなしく美しい詩の中に隠
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