東京パック /1997-2007/AB(なかほど)
 


たとえば

 足立・魚屋

体育館横の自転車置き場で
剣道部の練習の声が聞こえてくると
僕は
もう夕焼けを待っているように空を見上げ
商店街の方向へ歩き出す
魚屋の前ではきっと
夕焼けが足りないと 
うつ向いてしまうのだろう




たとえば

 江東・くさや

ビールと合うのかな
と言ってるそばから
くさい くさい
といいながら
彼女はくさやを千切って
笑って食べた

戻って来た理由も
どうでもいいのかもしれない
僕も
ほんとにくさい
と笑って食べた




たとえば

 江戸川・花火の夜

君が百本の小説を乗り越え眠るころ
僕は一握の詩の前で童貞のままで
国際色の喧騒にしがみつきながらも
同じ月の夢に 

ニャー
   と哭く




抱きしめたもの



抱きしめたもの
全部ひっくるめて
冷蔵便で送るよ
君にとってはもう
要らないものばかり
かもしれない




   
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