あいつ/星丘涙
あいつは美しかった
おれの心を奪いはなさなかった
ときに空たかく突きあげ
太陽すら飲みつくし
あらあらしく叫んだ
あいつは本当にいいやつだった
優しいやつだった
おれはあいつに惚れていた
はじめての恋人だった
あいつのふところはとても深く
すべてを包み込み
傷ついた心もいやしてくれた
あいつはきらきらと輝き
おれの心までうつしてくれた
よるは優しくこもりうたを唄い
やすかれと囁いてくれた
たまにロマンスをかたり
せつない涙もくれた
ああ あいつに逢いたい
あいつは今ごろ誰かの夢のなか
ざあざあと
鳴いていることだろう
よせては返しながら
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