あるいはひとり?/寒雪
 
灼熱のアスファルトを
ひたすら歩く
やけに整然とした
雑踏を踏みしめ
雑草を魂の抜けた瞳で
見つめるふりをしながら
とにかく歩く
太陽さえ
僕の頭上に煌々と
輝いていれば
行先は見失わない
なのにどうだ
ぼくの
右から左から
上から下から
昨日から明日から
言葉が投げかけられる
耳に押し込んでくる
意味のない音の束が
ぼくを
前後不覚にして
ぼくから
方角を奪っていく
行き交う靴音の
剥き出しの悪意が
ぼくを
四面楚歌にして
ぼくから
静寂を奪っていく


焼け爛れたビルの谷間から
吐き出された情熱に
手に握っていた
懐中時計や
方位磁石は
すっかり形を失って
ぼくの心に
激しく汗をかかせるのだ
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