都会の夜空の下/坂本瞳子
 
ポップコーンが弾ける音
それが聞こえるだけでも
この耳は楽しいらしい

高層ビルがまた一つ建ち
そのアシンメトリなフォルムは
夜空をいびつに捻じ曲げ
火が花開く空間を奪ってしまった

音につられてつい
ベランダへと足は向くけれど
カーテンの向こう側で
気持ちはやはり裏切られ
虚しさのみが広がる

先端だけがかろうじて見える鉄の塔は
親しみを覚えることはなく

ときおり鳴り響く警報音に
懐かしさが震える
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