水へ 言葉へ/木立 悟
ずっと点いたままの灯りがひとつ
あふれる灯りのなかにあり
朝が来て夜が来て昼が来て気付かれ
そっとそっと消されてゆく
光が光に描く色を
光は持っていてはくれないらしい
水没した街を飛ぶ自転車
白い金属の線をたなびかせて
風に親しいものの群れが
風の近くをすぎてゆく
手わたされるたびやわらかくなる
常に同じでいられぬものたち
水の音 鈴の音
止まぬ音の方へ
拾った片目をあてはめて
水の多い夜を見つめる
涙は歩む
光を歩む
熱さに消え まばゆさに生まれ
涙は光を 光を歩む
白と黒の薔薇
雨あがりの曲がり角を埋め
戸惑う猫のかたわらに
標を燃した灰をそそぐ
世界が忌むべき言葉に満ちて
荒んだ明るさに照らされても
蝶は鬼の手を取って
雪をひとつ 野に置いてゆく
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