雨と手のひら/木立 悟
羊の群れが見上げる先に
生きもののあつまりのかたちの曇
黒い太陽は白くなり
鉛のように口をつぐむ
平たい国に咲く花が
丸い虹や風へと傾き
水を覆い揺れている
夜を梳く手に揺れている
金と緑の合わせ鏡
数億年後の地表に吹く笑み
土から花までの隔たりを
小さなはにかみが埋めてゆく
光が空に描く果物に
触れることなく涙は昇る
生まれの前も生まれの後も
ゆるやかな午後の雨を聴く
銀の径
交差する手の
むこうの星と曇
いつか 別れて
器を重ね 日を重ね
海へ海へ 心を飛ばし
やがてふたたび還るものを
水と笑みは出迎える
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