いぶき―旅立った義父に捧ぐ―/服部 剛
夫婦で、出かける準備をする
告別の朝
在りし日のお義父(とう)さんが見ていた
テレビがふいに、点いた
夫婦は顔を見合わせる
(からだを脱いでも
御魂(みたま)はおられる )
夕刻、お義父さんは骨となり
家に戻った
(可愛がられたダウン症児の幼い孫は
ちらちらと気配を窺い)
空色の写真の中にいるひとと
お互いの目を、合わせ
これからの日々の不安を?い潜(くぐ)る、決意で
語る〈ありがとう…〉のいのり
我が家における、新たな季節
その部屋の窓から
幽かな息吹きに
カーテンはふくらむ
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