名前/小川麻由美
時々開けられる引き戸から差し込む明かりは
身じろぎもせずに居る私にとって迷惑この上ない
引き戸ごしに聞こえてくる喧噪も静けさも
今のこの私にとってはなんら関係ない
徐々に変色してきた体に始めは違和感を感じたが
もうどうでもいいことで 私の一部が粉となり
周囲のもの達を染めることに何も抵抗がない
色づいたもの達は不平をこぼすこともない
不平をこぼすには口というものが必要だからだ
時々やってくる地震で私は寝返りをうつ
その日は突然やってきた
私とは質感が違う柔らかく動くもので
いとも簡単に明かりで満ちた場所に引きずり出された
その明るさに慣れたころである
今度は記憶に残
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