kissはチョコの味/渡辺八畳@祝儀敷
模型のようなチョコレート工場が頭の上に浮いている
私の身体は検体かのよう堅いベッドに固定されている
七色の熱電球が工場を派手にデコレーションして
轟々鳴る機械音は蛮人の儀式のよう響き渡っている
外を通過するトラックのライトが部屋の壁を刺す
おもちゃサイズのチョコレート工場はまるで
亡霊
工場に眼球などあるはずもないのに
私が微細な動きさえもしないよう
無機質のそれは冷徹に見張ってくる
チョコレート工場だというのに陽気さはひとかけらもない
壁面の鉄板には呪詛が刻まれているよう錯覚してくる
血液が消えていく 身体は動かない
かわいらしい大きさとは裏腹の暴力的な機械音は
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