しるけ/斎藤秀雄
ゴールポストにはじかれたような空。
寺の鐘の音
が
びくつきながら
鐘
から
離れていって、次の鐘の音
が
びくつきながら
前の鐘の音
を
追いかける。
追いつくことは稀だと思う。
君はびくついているから。
西洋人が東洋をまなざすとき、
そのまなざしにこもっている、
審美的に観察しようという
汁気の多い趣味判断は、
向こう側から
こちら側に
ひだのように
折り畳まれていて、
君のまなざしに
インストールされている。
すでに。
折り畳まれた
まなざしを
じぶん
のもの
と
思い込んで君は、
審美的に
その身を差し出す。
彼らのまなざしたい欲望専用にこしらえたもの
が
まなざされるなら、
まなざされる瞬間
に
存在しているもの
は
存在していないだろう。
悼むことをやめ、ともにあらねばならない。
(喪の挫折リミックス集)
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