ふたえ ささやき/木立 悟
巨大な火のなかの
ローラーコースター
冬に 冬に
突き刺さる倒木
午後は昇る
手のひらは消える
望まないものばかりが現われつづけ
径はさらに狭くなる
むらさきの外にあるものが
五つめの季節を隠すとき
羽は身体に埋められて
布のように涙を覆う
夜が夜を知ることもなく
夜が夜を語ることもない
霧が降る日に
現われる子ら
青に溺れる
岩の横顔
月の谷に
降りつもる花
木と紙の冬を陽が包み
郊外の景を揺らしつづける
水は水の笑み 行方なき声
白を去る白 見送るまだら
呼ぶものもなく鳥は散る
川は動き 湖の笛
壁に映る道化師の背
屋根のしるしに触れに来る子ら
消える手は消える手をかき集め
かろうじてふたつの花となり
塔の上にひろがる森
夜の白にささやいてゆく
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