目を開くと/斎藤秀雄
 

鉄の重さで
地下深く隠された井戸

底に沈み込んでいる。

井戸の底で
おもたい両手両足
は何かを探ろうとも
しない。

こころが
とても
落ち着いている。

それでも
右手は
何かを
掴んだぞ。

これは何だ。

鍵だ。

何の鍵だろう。
目を開く。

戦争はやはり終わっていた。
悼むことをやめ、ともにあらねばならない。

     (喪の挫折リミックス集)
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