もつれる/伊藤 大樹
 
わたしの骨が
気づかぬうちに
新しいカルシウムに変わるように
少しずつ平和はゆがんでいき
ついに/衝突する

わたしの眼球が
くだけちって
歩行困難になり
手脚ふるえて
滲んでいく水際、
余白は
悲しみのぶんだけ用意されている
或る日
靴が片方なくなり
素足で帰った
それから毎日ひとつずつ
周りのものが消えていった
誰にも買われない林檎は
そうして
ひそかに 腐っていく

(胚胎する頽廃、)

或る日 気づいたら
わたしには
もう 言葉しかない

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