紙の飛行機/やまうちあつし
 
紙で飛行機を、なんて
誰が考えたことだろう
一体どれだけ乗れるというのか
世界には70億もの
人間があふれているのに
私たちには牙や鱗がないかわり
言葉というものを持っていて
言葉にあるものはすべてあるから
紙にはなんでも宿してゆける
僕の方言で
彼の国の言葉で
君の神様の名において
彼女のふるさとの住所を
「行って伝えなさい
 すべての
 つくられたものに」
だから隣人に
だから他人に
だからテロリストに
だからあなたに
お願いがあります
この詩を読み終えたなら
ページを切り取り
紙飛行機を折ってください
あなたの部屋の窓を開いて
五月の空に飛ばしてください

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