ある夜の思い出/渡辺八畳@祝儀敷
 
子供たちと浜辺を歩いた
漁港の電球は強くて
横に並んだ僕らの影を
黒い波にくっきりと映していた
夜の散歩に子供たちははしゃいでいた
僕は海側の一番端にいたので
きゃっきゃ舞う子供たちは
逆光で真っ黒に見えた
眠くて少しとろんだ目をしながら
僕は飛びまわる影たちを眺めた
子供たちは冷たい海の水に
その手を入れてはつめたぁいと喜んでいた
濡れるからあんまり深く入んなよと僕は言った
波は幽かに重い音を立てていた
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