したたれ/佐々宝砂
生ぬるい湯が入ったゴムの風船、
それがわたしだ。
熱々だったことなんかないし、
凍りついたこともない。
手の届くところに何もかもがある。
肩こりの塗り薬(インドメタシン入り)、
豆乳で割ったウィスキー、
メンソールの煙草、
灰色のくたびれたカーディガン、
パンツ、
スマートフォン、
茶色な帽子がひとつ、
たくさんの本、本、本、本、
ニ穴パンチ、
それからこれはなに?
千枚通しだ。
木製の持ち手部分は油で黒ずんでいるが、
金属でできた部分はぎらぎらの銀色。
この部屋に誰かきたことがあっただろうか?
わたしの意志に関係なく、
この部屋にものが増えたこ
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