崩れた土地/葉leaf
かつて家が建っていたが
津波で流されてしまった
今はもう何もない宅地に
老人はしばしば訪れる
幼い頃近所の友達と遊んだ記憶
自分の稼ぎで建て替えた時の記憶
妻との過去の暮らしが詰まっている
老人の身体の一部である土地
老人の生命を動かす土地
それがいまや存在だけになってしまった
存在だけの土地を老人は歩く
取り戻せるのか取り戻せないのか
とにかくここへ戻ると
温かい過去の息吹で生き返る
私も存在だけになってしまった
この土地と同じように
老人はふとそんな感慨に見舞われる
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