本能か/坂本瞳子
 
月は見えない

普段から夜空など見もしないくせに
月の輝く夜など欲しくもないくせに
一番星などどうせ気づかない
流れ星など見ることはない

赤らんだ空に涙を乾かしてもらったことは
あったかもしれない
遠い昔のこと

心が騒ぐ
ふと窓辺に足が向く
取り憑かれたように窓を開けて
身を乗り出してまあるい白い月を
闇夜に探しては見るけれど

月は見当たらない
普段から見ないくせに

そして吠えたくなる
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