終電/
 



皮脂で汚れ切った車窓越しに
遠ざかる
街の灯を眺めている

真っ当に生きて
正しく幸せになることが
こんなにも簡単だと気付くまでに
随分と
遠回りをしてしまった


片道分の切符と
一人分の体重が座席に微睡んでいく

揺り起こされるまで
最後のアナウンスが流れるまで
この電車が止まるまで
どこまで
この身体で行けるだろう

雨が上がって
いつか
帰り道さえも忘れてしまった頃に
私はどこにいるのだろう


日々を乗り過ごして
満たされる錯覚に沈む

空が好きで、クラゲが好きで
ほんの少しのスパイスを夢見るような
普通の女の子に
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