「かわいい」ってこと。/木築
 
うつくしいもののすべてをひとにうつすことの醜さ、を遠目にまたは水面に見る。花が咲くことの尊さと草がしげることの尊さは同一のもので、いろどりのちがいをひきくらべて花びらを賛美する愚かさは、ただそれだけで可愛くある。

愛せるものはすべて愚かで、醜いものだって可愛らしい。

水面にはさざなみ、もともとろくに見えやしない。
わたしは口をひらく。こんぺいとうのはかなさで甘い言葉がゆれることに、うつくしさも醜さも愚かさもふくまれる。

刃がうつくしいと思ったことはあるだろうか。おそろしさが、ぎちぎちに詰まった麻袋は地面のうえにひろがっていく。ナイフは錆びてしまう。鋭くなくなったものに水をかけるような真似をする。

醜くなってくれればきっと愛せる、と思うこころが醜い。可愛いってことのすべては汚いものからできていて、可愛いものはすべてピカピカと輝いて、愛情をいつだって誇っている。
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