きずとしょくもつ。/木築
かなしいとひとが告げたとき、突然かなしみはしょくもつの形になって、ガリガリと噛み砕いてしまえる。しょくもつを食べるのには限度があり、胃がすくまでは口内にモゴモゴととどまっている。
はきだす。
吐瀉物。背中をなでる手で救われるものがある。水をあたえられて、飲みくだせることもある。ただ単に、吐けなかったものは腹のなかで腐っていく。希釈すらされなかったのうど。濃いものは胃をあらして、のたうつあまりに他人の腕に爪をたてる。ぎりぎりとなる。
きずあと。
痛みは、濃く、こくある。傷ついた手には涙がしみるだろう。ひとはそれを見ない。爪のあいだの肉を見ない。
つめあと。
腐ったにおいに
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