そこにある日常/梓ゆい
 
古い写真のおじさんは
口をへの字に曲げて
堂々と背筋を伸ばす。

綺麗に整えた軍服の襟元は
これから死に行く運命でさえも
「私の誇りだ。」と
言っているかのようだ。

行ってらっしゃい、気をつけて。と手を振って
私を見送る父と母を眺めたら
今脱いだばかりのスリッパでさえも
帰りを待つ家族に見えた。

戻る   Point(2)