帰り道には息白く/金槌海豚
帰り道には息白く
粉雪は暗がりの空から降り
人の歩みの前に降り
犬の歩みの後に降り
踏まれる間もなく吹かれて消える
帰り道には息白く
口々から放たれたおしゃべり達は
流れそして漂いながら
疲れ果てて眠りつくまで
細かく飛び跳ね続けている
帰り道には息白く
往来を行く人の煩いは
道端に吐き捨てられ
聞こえぬ呟きを落として
吹き抜ける風に飛散する
帰り道には息白く
袂の下に潜めた贈り物
その中にくるまれた淡い憧れが
くるくると巻く風の伸ばす手に
盗まれまぬよう先を急ぐ
帰り道には息白く
前屈み歩く僕の想いは
つま先の蹴り上げる先に
一筋の視線を引きながら
その先を照らす言葉を見つけられない
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