「アネモネ」 七首/
もっぷ
かの冬が懐かしいかもまだわたし母なる海で旅をしていた
雪が降る音と覚えた海原の夜の遠くの母の心音
二月から待たれていると知りながら躊躇っていた三月生まれ
三月のまだ浅い日の朝早くありったけ泣く〈愛を知りたい〉
うぶごえの願いのしっぽ引き摺ったままで靴紐むすんで転ぶ
遊具より砂場ばかりのまだ二歳飽きればあたらしい海を訪ねて
春夕焼けむずかったままの生い立ちをあやして暮れていま歌を恋う
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