テンペスト/キクチミョンサ
 
夜があけて
生乾きの服もすこしは
からだから離れてくれたかい
地球の表面をなぞりながらねむるような
そんな孤独はなかなか慣れてくれない

あらしのようなひとに恋をした



やけにしゃべりたがる憂鬱だけ
膚を洗ってくれるが口許はひわれたまま
ここにいるということが
ぼくをどこへも行けなくさせる
ことばになんか
見つけられなければよかったな

あらしのようなひとに恋をしたのは
船が沈む五分前のこと



東京の夕方は居酒屋のなかで暮れていった
当然ぼくらそれを見れずじまい
なんにも知らない顔で
東京の夜、みじかい旅をした
意味がなにか連れてくることはあっても
先立った妄執のほうがきれいだ





雨はふっていなかった
とても平凡な夢の続きだった


 
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