ひとつ したたり/木立 悟
 





遅い花火が
ひらめきひらき ひろがったまま
低い空を漂っている
未明を持たない遅い夜を
音より淡く漂っている


岩のはざまから見える枯れ野に
光の枯れ木が立っている
ひとつの細い叫びのかたち
あるいは器の亀裂のかたち


崩れ重なる山々を蹴り
夜を夜を駆け昇る姫
絶え間なく
絶え間なくしたたる音


蒼の蒼がはばたく方へ
片目の涙は落ちてゆく
雷鳴 木の葉
松明のようにゆらめく原


叫び 叫び
叫び足りなさを叫びつつなお
姫は降りしきる夜を浴び
けだもののうたに目をふせる


遅い光が地平に傾き
蒼は黒になり朝は遠のき
祭は眠り 花は眠り
空の爪跡だけがかがやいてゆく





















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