成長の過程/坂本瞳子
 
夏の気配が確かに漂う
まだ肌寒い夕方
この居心地の悪さが
不気味にすら思われ
全速力で駆け抜けようと
試みた後で思い出した
速くは走れないことを
あんまりにも格好悪くって
笑って誤魔化そうとしたけれど
ついには涙がちょちょ切れた
溢れて零れて大声で泣いた
実に無様だ
こんなにもどうしようもない自分を
なんともしてやれない
やっとそう叫ぶことはできたけれど
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