プードル/chiharu
 

わたしは黒いプードル
年齢は10歳
人間で言えば60歳を過ぎた
おばあちゃんってとこかしら

わたしは今、ある事情から
ここ、下北沢のペットショップで
里親さんが来てくれるのを待っているの

白内障ありますとか
手術痕ありますとか
あまり知られたくないことの書かれた
大きな紙をガラス戸に貼られている

わたしの周りの子達は
みんな小さな子犬と子猫
貼られた紙なんか読まなくても
艶のない毛並みと真っ白な瞳を見れば
みんな私の前を素通りしてゆくわ

子犬や子猫のガラス戸には
命の値段が書かれているんだけど
わたしには値段が書かれていない
わたしの命には値段がないのかしら

そんなことはもうどうでもいいの
この狭い箱の中から出して欲しいの
早く自由になりたいの
死んだら自由になれるのかしら

今日もわたしの前で
足を止めてくれる誰かを待っている

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