水中花もしくはオフィーリア/石瀬琳々
 
のように
その花束はその花冠はあなたのためのもの


その花を真っ赤に染めて川は流れる
その花が白いのは誰かのための祈りに似ている
その花を捧げるようにわたし自身を投げて
見つめ合って ずっとそれを待っていたと知るだろう


 あなたを愛するためにわたしは水を渡った


おとこのひとは少女をやさしく抱きしめて
少女は彼にくちづけをした
そしてそのままふたりは水のなかに溺れた
絡み合う長い髪 まるで恋に溺れるように


 水のなかにこぼれる花
 静かに落ちてゆく花
 約束された婚姻の
 

それはひとつの水だった
流れるようにわたしに注ぎ込む
それはひとつの歌だった
くちずさんでなお心を揺さぶるのは
或いはたましいさえも



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