知らないわたしと知ってるわたし/薔薇の人
感覚だけで探してみる
其処ら中に転がる記憶に惑わされながら
暗闇の奥へと意識を沈ませていく
ゆるゆると闇の流れが変わるのを感じて
闇に飲まれる恐怖を覚えながらもわたしはまた深くへ沈んでいく
その先にあるのはきっと絶望なのだと
そう確信せざるを得なかった
閉じた目から涙が頬を伝うそのとき
闇の中で静かに流動する竜のような記憶のかけらを見つけた
わたしの中にあってわたしではないソレだった
もう残りのかけらを探す必要はないと
そっとソレを掬いあげてゆっくりと瞼を開ける
涙はもう枯れていた
光を取り戻して眩しいと瞬きをした
自分探しの旅を続けるわたしは暗闇に置いてきた
わたしは何も知らないし覚えてもいない
忘れていたということは忘れる必要があったからだ
世界のはじまりの役目は終わったんだ
そして暗闇で竜を見つけたわたしと分岐して
これからも記憶を転がしながら生きていくのだろう
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