どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
沙織は金髪の死体をしばらく見下ろしていた。どうやらこの男に殺されたらしい。でも話の内容から察するに、それは自分のせいでもあった。それについては特別何の感情も湧かなかった。ただ一つだけ気になるのは、去って行った若い男のことだった。あの人は私となんらかの関係があったのかしら。いくら考えても思い出すことは出来なかった。沙織は自分の部屋に戻り、さっきよりいくらかうなだれたみたいに見える自分の死体にまた話しかけた。
「ね、あんたさ…馬鹿だよね。」
せめて覚えておいてあげればいいのにね、とぽんぽんと頭を叩く真似をした。そうしてまた死体の前に胡坐をかき、ぼんやりと窓の外を見た。そこには虚ろな夕暮れが広がって行こうとしている。すべては終わった。私はいつまでここにこうしているのだろう―。
【了】
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