どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
るべきことはなにもないような気がした。もしかしたらそれはどこかで、誰かが勝手に進めてくれることなのかもしれない。だったら自分はそれをのんびり見物していよう。


 「つまらないのかい?」
 モールの広い休憩スペースに腰を下ろして、彼女と今までに交わしたラインを読み返していると、突然そう声をかけられた。顔を上げると、テーブルを挟んだ前の席に二十代半ばという感じの淡い金髪の男が座っていた。売れないバンドマンみたいな革ずくめの格好をしていた。陽平と目が合うと、へへっ、と小馬鹿にするように男は笑った。陽平はしばらく男を見つめていたが、なんと返すべきか全く思いつかず、首を横に振ってまた俯いた。覗かれ
[次のページ]
戻る   Point(2)