肌寒い四月の朝に/もっぷ
 
かなしいよう
かなしいよう。」
それから歌わなくなった鴉がいる
蒼い春の鞦韆(ぶらんこ)は
君のものだよ

何がかなしいのかは知らない
問わない 待つよわたし
きっと待つよ

  静かに 秒針が流れていく
  対の二本 まばゆくきらめく荒川を
  流したのはわたし
  流されていくのは証し らしい

蒼い春の鞦韆から
鴉が行ってしまった
知らないことを残して
問わなかった後悔を残して
待っていたのに要らないって

  弔ったはずの一対を
  見慣れた部屋で見つける 磨かれて艶めいて 夢のなかで

  刻み続けたいと
  応えたい、と
  喪っても喪っても
  すでに ついに自らをも喪っても それでも

まだわたしは
待っている らしい
蒼い春の鞦韆が一陣の風に震えている


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