誰も思い出さないその雨のことを/ホロウ・シカエルボク
 
、まるで残務処理のように―慌てて、ぶちまけたみたいに―空は気持ちのいいほどの青を湛えたままなのに…俺はどこかへ身を隠す気にもなれず、濡れたままでしばらく歩いた、広い、自然公園に潜り込んで、屋根のあるベンチに腰を下ろして雨が止むのを待った、それが叶えられるのは午後も遅くなってからだった、傘で身を守っていた者たちはそれをたたんで、まるで初めから雨など降らなかったみたいな足取りで歩き始めた、俺は日の当たるベンチへ移動して、濡れた服が乾くのを待った、ようやくなにもかもが片付いたころには、俺だけがその日激しく雨が降ったことを覚えていた。



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