墨が離れた/藤鈴呼
 

パラリと言う音が 今にも聞こえそうな程
距離感は 遠くもなく 近いとも呼べない

厚みは ゴムほどではないが 
紙ほどは 薄くない

一本の髪の毛が すっと風に攫われる瞬間のような
美しさを称えて
光が笑う

こんにちは
その表現 間違っていますよ 

と 問いかけようとして
口を噤む

最近のパソコンは御洒落だ
外観のみならず 自らの打ち間違いをも 
自動的に訂正してくれる
そんな機能を持つ

昨日は 選ぶことに 夢中だった
間違えたつもりの変換を 楽しむ余裕さえあった
その変化に 自ら 戸惑っている ふりをする

大きく振りかぶる ストライ
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