「訳あり」/もっぷ
 
未里はもうこれが最後のチャンスだと
準備しておいた大きなレジャー用の鞄と車のことを思い描き始めました

今日のこの寒さは明日夜明け頃まで続き
以降本格的な春の訪れとなるでしょうなどと傍らのラジオが
ラジオは消されその手で暖房もリモコンでオフに
した彼女の携帯が鳴りました
誰からとわかると
すがるようにしがみついて挨拶もせず
徐々にやがてついに激しく無防備の過ぎるほどに

かなしみを

泣く、という行為で電話口に向けて伝え始めました
電話の向こうの方はずいぶんと辛抱強いようでどうやら質問一つすることもなく受けとめている様子

まるでまったくどれほどが過ぎたのか少しずつ
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