雨夜にさす/クロヱ
冷たい空に似合う、寒い雨が降っていた
暗いインクの道に街灯が流す 光の滝
その中で これまた同化しそうな程の黒い傘をさしていた
「こんな景色では 僕は帰れないね」
喜びの滲んだ声で そんな意地悪なことを言う
あなたがあたしに言った
「誰のためでもない この世界で」
その先をあたしは思い
またあなたの言葉の先を願った
あなたの言葉は
魅力的すぎて
万華鏡を空一面に映したような
あたしの言葉と思想では とても追いつくことができない
なにを思い なにを感じて
どんな旅をしてきて
あなたは あなたを形作るの
「雨夜に 傘も差さず 手を繋ぎ立つ そんな二人がいてもいい
愛とは そういうものだよ」
薄い水面をうち 瑞々しく駆け寄る
また 冷たいあなたを包む あたしの腕
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