音楽/DFW
音楽は子供組が舐める風邪シロップみたいなものなんだって
遠い昔にいた偉い人がそう言ったんだって
いつかのあなたがぶっきらぼうに教えてくれた
わたしは中古の楽器を担ぐあなたについてまわった
ずっときらいだった近所の遊歩道は
あなたと歩くたびに好きになっていった
あなたはきっとあのときもどのときも
斜め後ろにいたわたしにではなく
茜色に染まってビルの切れ間に燃え尽きてくオゾンや
夜空に散らばる星と星をでたらめに繋いで遊んだものに
問いつめた定義を その場しのぎに
安穏なアンソロジーから庇っていた
わたしはなにもかもが台無しになるくらい粉々に風邪シロップを噛み砕いてしまい
最果てに揺らめくすべての音はあなたの声でしかなかった
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