祝福の呪文/しもつき七
 

その魂の美しさは通貨になる
ふかい森の奥でみどりいろに光る怪獣の眼と
契約して明るい場所まで走っていける
花嫁よ
ウェディングドレスが泥を食っても
きみはずっときれいだ
肉のわたしは獲物


ひくい重心でまわる星の天動説
信じることと愛することとは違いますね
唇の端からこぼれる泡の呪い
地鳴りのおとがして
宝石がくだける


誕生会みたいにテーブルクロスを飾って
ご馳走ばかり並べたらくちずさむ歌のソラシド
永遠の誓いに骨を砕かないように
期待に胸を奪われないように
わたしたちは笑う


叶えるための約束はリボン
こんなに頼りないやりかたで結びあった
未明に
光は満ちて
たくさんの忘れ物を照らしている
おめでとう、きみのすべてを祝福するから
振り返らずに走れ


この質量で生きていくと決めた
なにも捨てないしなにも拾わない手に
石のない指輪が光って
意志のない瞳を殺した



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