エリカの缶/もっぷ
誰も知らないちいさな町の誰も知らないちいさな部屋で暮らしている女の子、エリカの許に毎年三月八日になるとミモザの花束が贈られてくるようになってどのくらいが経ったでしょう。相変わらずエリカは九歳、毎年の秋のお誕生日に九つになるのを繰り返して過ごしています、たった一人で。ですから三月八日という日付にも、もちろん贈ってくれる相手のことなどさっぱり見当もつかず、けれど度重なるうちにそのことはエリカにとって自分のお誕生日よりも大切な大事件となっていったのです。
今日は十二月の十九日、今年の冬至はもう明後日のこととなりました。エリカの表情が徐々に明るくなっていく、その折り返し地点といえます。逆にいえば
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