夜の辺/木立 悟
水から杖を拾い上げると
空気に触れて銃になった
水面に映る双頭の蛇
銃はやがて砂と消えた
路地のむこうが燃えている
火の他に照らすものは無く
誰も居らず
何の音も無い
川の上を
どこまでも歩いてゆくもの
塵や芥の花々が
止むことなく降りそそぐ
蒼へ向かう螺旋の径に
明かりがひとつ点いている
塩と砂から生まれ
洞へ洞へ消える鳥
菓子でできた街から
人はいつか居なくなり
波が砂糖だけを舐めつづけ
残りは陽の色のまま立ち尽くす
樹々と空を縫い合わせ
降るもののはじまりへさかのぼる
無数の染み 金緑の星
見るものの涙に吹き荒れる
水面に生まれ 沈むもの
斑らな揺らぎに滲むもの
毒は底に到くことなく
水草のように夜を映す
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