窓/点在するワームホール/桂
#2
男は車の中でタバコをくわえながら
フロントガラスにつたう水滴を眺めてる
同棲している彼女と大喧嘩した彼はアテもなく車を飛ばし 今は見知らぬ街にいる
感情に流され吐いた暴言に何一つ真実はなく 今でも彼女を愛してる
家出のつもりで始めたこの旅は
ただの雨宿りであったことに気付く
キーを一つ回してワイパーのレバーを下げる
カーナビが彼の気持ちを代弁するように呟く
経路を自宅に設定します...
#3
白い壁に圧迫された病室では長方形のその窓だけが唯一彼女と外の世界を繋ぐ入り口だった
面会時間が過ぎて誰もいなくなると
少女の不安
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