evolution/月の下で舞う鱗粉/
 
いていた

どのくらい飛んだだろう?

少しの風でバランスを崩される
その小さな彼は羽根が恨めしかった

もう少し もう少しと
自らに言い聞かせる間にも月は沈んでいく

空が白みだして

夜明けを迎えようとする頃

ついに彼は力尽き まだ薄暗い海へと真っ逆さまに落ちていく

朦朧とする意識

落下する最中に

彼は一本の流木を見つけて

それにしがみつくようにして着地する

今日も敗北だった...

目の前で沈んでいく月を
流木の上から薄目で見送りながら

悔しさの中で彼は眠る

「明日こそは...」寝言でそう呟く
彼はまだ気付かない

流木に映る彼の羽根の影が
昨日より少しだけ大きくなっていることに...
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