evolution/月の下で舞う鱗粉/
 
evolution/月の下で舞う鱗粉

薄い雲の向こう

見え隠れする月の下

進化の光を目指して

懸命に鱗粉を振り撒き

飛びつづける 一匹の蛾

暗い海の波打つ音が

「お前に止まり木はあるのか」と脅す

その小さな生き物は答える代わりに小さな羽根を何度もバタつかせて

昔に海猫から聞いた「進化の光の話」を思い出していた

月が沈む前にその光の発する大地に辿りつけた者は

自らが望む姿に進化することができる

月の光は彼にとって最後の希望だった

天敵に襲われて

消えていった仲間の顔を思い浮かべる度に

彼は自らの力の無さを嘆いて
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