アンダーグラウンドの指先/ホロウ・シカエルボク
凍てついた死体と古ぼけたペーパーバッグだけが転がっていたコンクリートのままの床の上で音楽が流れている、奇妙なインストルメンタルで旋律らしい旋律もそこには見当たらない…インプロビゼーション的なそれはだけど、最後の冬を呼び戻した二月の終わりには不思議なほどよく似合っていて、指の瘡蓋に噛みついて毟り取りながら、だけどこびりついているはずの血液の味はほとんど感じられなかった、俺はホルマリン漬けの奇形種のように窓と床の間の空間に潜り込んでいた、渇きを覚えていたがそれは、ミネラルウォーターではどうにもならない種類のものだった、指に空いた穴からあらゆる亀裂が心臓に至るまで広がっているみたいな感覚にとらわ
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